テリーとロバート
Terry and Robert
by Marianne Wright
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《 解 説 》
男性との恋愛を扱った女装小説というのは、ふつう、女装という行為が先にあって、女の気分を味わっているうちに男を好きになってしまうというパターンが多いのですが、この小説は逆。そのケのない男が、まず男性に心惹かれ、その男性の望みに沿って女装していくという順番です。
といっても、暴力的に強要されて‥‥とかいうありがちなお話ともちがいます。相手の男性は、あくまでやさしくてフェア。女装にしてもセックスにしても、無理強いはしません。どこまでも主人公の気持ちを大切にし、まるで宝物のように扱ってくれます。
女性としての恋愛を夢見る女装者なら、こんな男性が目の前に現れたら、とろとろにとろけてしまいそうです。
でも、この小説の主人公は、けっこう「自立した女」だったりもします。
で、問題は‥‥
作者が作中で、これは「実話」だと言っていること。
「うそつけ! こんな都合のいい話が、現実にあるもんか」と思い、「いや、実話だからこそ、こんな設定が平然と出てくるのかも」と思い、最終的には「ま、ニューヨークだからな」と納得するという、そんな小説です。
そう感じるのは、主人公たちを取り巻く脇役や、舞台となる「お店」の数々など、バックグラウンドの描写がリアルかつ多彩で、なんでもありの「都市小説」になりえているからでしょう。
理屈っぽくてアクティブ、だけど繊細でナイーブという、主人公のキャラクターも、いかにもNYっ子です。
セックス描写も、ゲイ・セックスをそうとう具体的に書いているにもかかわらず、暑苦しくも湿っぽくもなりません。ブルックリンのアパートの一室や、マンハッタンの夜景がきれいなマンションで、実際に起こっていそうに思えるからでしょう。
主人公が女装しても、けっして「美人」にはならない点(最後まで、けっこうバレてる)や、恋愛やセックスに対する気持ちが時々刻々右往左往する点など、和訳のニュアンスが難しい小説でした。そういう点でも、やっぱり実話かな‥‥と。
ま、それはともかく‥‥、
ニューヨーカーたちの、甘くてほろ苦い(女装)恋物語。とろけてください。
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