義務、名誉、国家
Duty, Honor, Country
by Brandy Dewinter

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《 解 説 》

 原題を見てもらえばわかりますが、この題名はまったくの直訳です。こんな、女装小説にあるまじき(?)タイトルの小説を書いたのは、このコーナーで最初に紹介した『リーズナブル』のブランディ・デュインターさん。
 この“Duty, Honor, Country”というフレーズ、アメリカではかなり有名なもののようです。かのダグラス・マッカーサー元帥が、1962年にウエストポイント陸軍士官学校でした最後の演説のタイトル。おそらく、たいていのアメリカ人なら、この題名だけで「軍隊の話だな」とピンと来るのでしょう。

 それにしても、この人の文章は難物です。とにかく一文が長い。関係代名詞的な修飾が何層にも重ねられて、構文がややこしい。日本語にするときは、どうにもならなくて、ぶつぶつに切っちゃってます。
 で、もっとやっかいなのは、そういうわかりにくい文章になる理由。もってまわった修辞や、文法的に「?」な文章には、たいてい「言葉あそび」が仕掛けてあるんです。語呂合わせの類なら、無視してもいい(というか、そもそも和訳できない)のですが、けっしてそれだけじゃない。修飾関係をわざとぼかしたり、ダブルミーニングな言葉を多用して、表面上の意味とはちがう意味を匂わせる。時には、表の意味とは正反対のことを言ってたりして‥‥。そしてそれが、ストーリーや心理の重層性を表現してることも多いんで、油断ならないんです。

 各章のタイトルが、“Tra‥‥”でそろえてあるようなところを見ても、この人の言葉への凝りようがわかると思います。

 そんなこんなで、辞書を引きながらパズルを解くような作業に何度も放り出し、結局、手をつけてから十年近くかかってしまいました。わかるかぎり、それに日本語にできるかぎり、原文のニュアンスを出したつもりですが、私の英語力では、作者が意図した「あそび」の半分も拾えてないんじゃないかと思います。

 とはいえ、男の子が大好きな「戦争」「スパイ」「バイオレンス」という世界に、レースやフリルいっぱいの女の子的世界が浸食し、その結果、とんでもなくエロティック(時には、ちょっと引くくらいハードコア)に展開するストーリーは、ユニークそのもの。拙訳でも十分に楽しんでいただけると思います。


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