ワーキング・ガール
Working Girl |
ある条件の下、なんらかの事情で、2人の男性のうち1人が女装して共同生活を送らざるを得なくなる。そこで生じるさまざまなトラブルやラブアフェアー‥‥。 ――女装小説にはよく見かけるパターンです。 かくいう私自身も、「ハワイアン・ハーモニック・ハネムーン」なんかは、まさにそのパターンにのっとって書いてるわけで‥‥。 この小説も、そんな1編。 「なるほど、こういう手もあるよなあ。文章もスピード感あるし‥‥」と思って、試しに訳しはじめたら、これがけっこうイケました。 ラストはひねりがなく、セックスシーンを書いたところで力尽きたという感じもありますが、なにより、ユーモアがあって軽い文章の中に、主人公たちの「心の揺れ」がきっちり書き込まれているのがいい。 自分の心に必死にブレーキをかけているのに、それでも惹かれていってしまう2人‥‥。 私なんかは、ただ露骨なだけのエッチシーンより(もちろん、それが嫌いというわけじゃないですが)、むしろこっちの方がエロチックだと感じてしまうわけです。 ただ、複層的なニュアンスをもつ単語を多用することでテンポのいい文章に仕立てているところがあるので、原文は、飛躍が多く、言葉足らずの感じも受けます。単語ひとつひとつの背景がわかる英語圏の人ならともかく、このまま訳したんじゃあ、作者の意図は伝わらないんじゃないかと感じ、日本語にする際――私なりの解釈で――修飾語句や接続語、つなぎのための文章をつけ加えたところがけっこうあります(原文にない文脈を創作したりはしてないつもりですが)。 そのへんは、お含みおきください。 なお、原題の“Working Girl”は、もちろん「働く女性」という意味になるわけですが、ビジネスの場で“girl”を使うのは差別に当たるということで、今はほとんど使われない言葉らしいです。 “work”という動詞には、他動詞として「‥‥をつくる」とか「‥‥として作用させる」という意味があるようですから、「女の子ができるまで」とか「女の子として機能する」みたいなニュアンスでつけられた題名じゃないかと思います。 |
小説を読む |